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ロシア極東地方は、ひとつの共和国(サハ共和国、1990年に主権宣言)、二つの地方(沿海地方、ハバロフスク地方)、四つの州(アムール州、マガダン州、カムチャツカ州、サハリン州)の合計7行政区域から構成されています(厳密には、ユダヤ自治州、チュコト自治管区は地方、州並みの権限を持っています)。州や地方は日本の都道府県に相当し、行政府長官(知事)を置いていますが、サハ共和国では大統領がトップです。
これらの行政区域のうち、日本海に面しているのは、沿海地方、ハバロフスク地方、サハリン州です。 |
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沿海地方やハバロフスク地方の属する極東地域南部は、モンスーン性気候です。ただし、内陸部は海岸部より寒暖の差が大きい。例えば、ハバロフスク地方内陸部では1月の平均気温が−33〜−22℃で、7月が18〜22℃と寒暖差が大きいのに対し、沿海地方南部では、1月の平均気温が−12〜−15℃で、7月が17〜18℃と比較的小さい。
極東地方における降水量は、カムチャツカ半島東部を除く大部分の地域で夏期に集中しています。そのため、夏期にはしばしば豪雨により洪水が発生したり、土壌の水分が過剰になったりして農作物に被害を与えることがあります。
人口分布と生産活動は一様ではなく、人口、生産のおよそ7〜8割は南部(ハバロフスク・沿海地方・アムール州)に集中し、面積で4分の3を占める北部の集積度は極めて低い。人口の75%はウラジオストク、ハバロフスクなどの都市部、南部のシベリア鉄道周辺や気候に恵まれた地域に居住しています。 |
極東地方の行政区分と人口 |
地域名
|
首 都 |
面 積
(万km2) |
人 口
(1000人) |
人口密度
(人/km2) |
沿海地方 |
ウラジオストク |
16.6 |
2,299 |
13.9 |
ハバロフスク地方 |
ハバロフスク |
82.4 |
1,851 |
2.2 |
サハリン州 |
ユジノ・サハリンスク |
8.7 |
717 |
8.2 |
サハ共和国 |
ヤクーツク |
310.3 |
1,109 |
0.4 |
ユダヤ自治州 |
ビロビジャン |
3.6 |
220 |
6.1 |
アムール州 |
ブラゴベシチェンスク |
36.4 |
1,074 |
3.0 |
マガダン州 |
マガダン |
119.9 |
534 |
0.4 |
カムチャツカ州 |
ペトロパブロフスク・
カムチャツキー |
47.2 |
446 |
0.9 |
極東全体 |
− |
621.6 |
8,057 |
1.3 |
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(出所)旧ソ連国家統計委員会、人口は1989年 |
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住民の大部分はロシア人ですが、北方諸民族も多くみられます。しかし、ヨーロッパ・ロシア地区と異なり、極東全体で8割を占めるロシア人は、エベンキ・チュクチ・ナナイなどの少数先住民族やヤクート人、朝鮮人などと特別の問題もなく共存しており、大きな民族問題や紛争はみられません。これらの住民形成は、歴史的に長期間にわたってできたものです。ハバロフスク地方のアムール川流域には、ナナイ人、エベンキ(ツングース)族、ウリチ族、ニブフ族、エベン族、ウデゲ族、オロチ族、ネギダール族がいます。沿海地方には、ウデゲ族、ナナイ人、サハリン州では、ニブフ族、オロチ族がいます。 |
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ロシア極東地域の民族構成(1989年現在、単位:1000人) |
民族名
|
沿海地方 |
ハバロフスク地方 |
サハリン州 |
極東地域全体 |
人口 |
% |
人口 |
% |
人口 |
% |
人口 |
% |
ロシア
|
1,960.6 |
86.9 |
1,380.1
|
86.4 |
579.9 |
81.7 |
6,156.8 |
77.4 |
ウクライナ |
185.1 |
8.2 |
96.7 |
6.1 |
46.2
|
6.5 |
620.6 |
7.8 |
ヤクート |
|
|
|
|
|
|
365.2 |
4.6 |
白ロシア |
22.0 |
1.0 |
18.3 |
1.1 |
11.4 |
1.6 |
99.4 |
1.3 |
タタール |
20.2 |
0.9 |
16.1 |
1.0 |
10.7 |
1.5 |
88.9 |
1.1 |
北方諸民族 |
1.7 |
0.1 |
23.5 |
1.5 |
2.9 |
0.4 |
87.9 |
1.1 |
朝鮮 |
8.5 |
0.4 |
|
|
35.2 |
5.0 |
53.9 |
0.7 |
ユダヤ |
|
|
5.1 |
0.3 |
|
|
|
|
その他 |
58 |
2.6 |
57.9 |
3.6 |
23.9 |
3.3 |
477.2 |
6.0 |
総人口 |
2,256.1 |
100.0 |
1,597.7 |
100.0 |
710.2 |
100.0 |
7,950.0 |
100.0 |
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(出所)ロシア統計国家委員会編『ロシア連邦の民族構成』(1990年、モスクワ) |
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極東地域にはサハ共和国(ヤクーチャ)、ユダヤ自治州、コリャーク自治管区、チュコト自治管区などの民族行政区画が設けられています。しかし、どの地域も民族構成は単一でなく、さまざまな民族が混交しています。1989年現在で、ユダヤ自治州には8,900人のユダヤ人が住んでいます。ただし、ユダヤ自治州といっても、実際にはユダヤ人は州人口の4.2%に過ぎず少数派です。これは、サハ共和国、コリャーク自治管区、チュコト自治管区に関しても同様です。
極東人口の88.5%がロシア語を母国語とし、ロシア人はもちろんそれ以外の民族も約半分がロシア語を母国語としています。義務教育課程でロシア語を教えているほか、ここ数十年で交通の発達などにより民族の移動、交流が以前よりはるかに活発になり、ロシア人以外の民族の間にロシア語が急速に浸透していきました。極東の多くの北方諸民族は、ツングース・満州語族に属していますが、こうしたロシア語の浸透は彼らにロシアをはじめとする他の民族の科学や文化の成果を摂取する機会を与えましたが、他方では、一部の民族語が消滅の危機に直面することになりました。
ロシアは、多民族国家であり宗教的多元主義の国ですが、1996年の調査によると、ロシア連邦市民の88%がロシア正教の信者です。他にイスラム教やユダヤ教、カトリック、仏教などがあります。ソ連時代(1917年以降)には、無神論の教育がなされ、宗教は弾圧されました。しかし、1988年にゴルバチョフ書記長が弾圧の誤りを認め、以来、信仰の自由は保障されています。
ロシアは連邦共和制であり、国家元首は大統領で国民の直接選挙で選ばれます。大統領の任期は4年です。議会は2院制であり、上院の「連邦会議」は共和国や地方からなる88の連邦構成体から計178名を選出され、下院の「国家会議」は、議員の半分225名が比例代表制、残りの225名が小選挙区制で選出されます。 |
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