「海辺の漂着物調査関係者会議」会議要約
2011年2 月18日、日本国富山県において、富山県及び財団法人環日本海環境協力センターがNEARプロジェクト海辺の漂着物調査事業の一環として、本会議を開催した。 本会議は、NEARプロジェクト海辺の漂着物調査事業に係る関係者が一堂に会し、海辺の漂着物調査結果や海岸漂着物対策について、情報交換・意見交換を行い、関係者による海岸漂着物等対策の連携や交流の推進を図り、もって海岸漂着物等の発生の抑制に寄与することを目的として開催され、北東アジア地域の沿岸自治体として、日本、中国、韓国、ロシアの11 自治体が参加した。(ロシア沿海地方は、資料提出による参加となった。) 本会議の参加者は以下のことを確認した。 |
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会議では、主催者を代表して富山県からの挨拶があった後、本会議の趣旨に賛同するNOWPAP及び日本国環境省のスピーチがあり、本会議に対する祝意や成果に期待する旨が述べられた。 基調講演では、日本国の特定非営利活動法人OWS代表理事の横山耕作氏から、「海洋ゴミが生き物に与える被害とその普及啓発」と題して講演があった。参加者は、海洋ごみ問題は、貴重な生物に被害を与える地球規模の環境問題であり、市民に啓発すべき重要な問題であることを認識した。また、生物への影響に言及することは、市民の共感を得やすく、行動のきっかけに繋がることから、海洋ご みに関する環境教育・学習のテーマとして重要であるとの認識を共有した。 次に、海洋ごみ対策の事例について、6自治体(資料参加の1自治体を含む。)から発表があった。 河北省秦皇島市からは、環境宣伝教育活動の一環として海辺の漂着物調査を実施していることが説明され、環境教育は若年層を対象にすることが効果的であること、海辺の漂着物調査は海洋環境保全やゴミ対策分野における対策への参加意欲を高めることに効果的であることが報告された。 長崎県からは、学生等が参加する清掃活動に対する連想法を用いた活動の評価方法について報告があり、この手法を活用し、活動に対する分析や考察を行うことが必要であることが指摘された。参加者は、今後、海洋ごみに関する環境教育・学習活動を実践していくにあたり、その評価に努めることが望まれるとの認識を共有した。 忠清南道からは、道における海洋ゴミ基本計画に基づき、各種の海洋ごみ対策が実施されていることが報告された。海洋ごみの回収事業のみならず、市民参加による海洋環境保全の活動も組織的に実施されており、このような計画的な海洋ごみ政策は、参加者の参考となるものであった。 ハバロフスク地方からは、ハバロフスク地方における計画的な廃棄物管理政策及び海辺の漂着物調査の実施状況について報告があった。ハバロフスク地方においては、海岸の漂着ごみの量は他の地域と比べて少ない状況にあり、今後も、各種の廃棄物対策の進展により良好な海岸の環境が維持されることが期待される。なお、海辺の漂着物調査が環境教育や啓発の良い事例となっていることが報告された。 鳥取県からは、昨年度制定された海岸漂着物処理推進法に基づく回収、処理の実施だけではなく、ごみの適正処理の推進、「ごみを出さない」、「ごみを捨てない」意識の醸成、沿岸諸国との連携協力、調査研究等の発生抑制の取組みが行われていること、また、関係者に対し、各地域において発生抑制に取り組むことについて協力を呼びかけていることが報告された。 なお、資料提出による参加となった沿海地方から、人為起源の海洋ごみ汚染防止及び清掃状況の改善のために、積極的な多くの提案があったことに言及する。次回以降の会議では、これらに対する議論を深めることが期待される。 最後に、事務局を代表して、財団法人環日本海環境協力センター(NPEC)が、NEARプロジェクト海辺の漂着物調査事業に係る趣旨説明と次年度の事業の方向について説明した。特に、市民による海洋ごみ対策行動を推進していこうとする「海洋ごみアクション」の考え方について説明し、これに賛同する自治体が、各種の普及啓発事業の実施を通じ、この考え方を市民に普及するよう努めることについて働きかけがあった。 |
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会議全体として、参加者は以下の認識を共有した。 |
・ | 海洋ごみの問題は、貴重な生物に影響を及ぼすなど、今や地球規模の環境問題として深刻な状況にある。 | |
・ | 海洋ごみ問題は、1国や1地域では解決が困難である。海を共有する沿岸や河川流域の全ての自治体に共通な課題であり、関係者が協調した取り組みが必要である。また、こうした協力ができる体制を作ることが大切である。 | |
・ | 沿岸自治体が、海洋ごみに関する各地域の状況や対策に関する情報を共有し、意見を交換することが大切である。 | |
・ | 沿岸自治体は、海洋ごみ問題に関して、その発生抑制策など、計画的に政策・施策を樹立し、着実に実施していくことが望まれる。 | |
・ | 沿岸自治体は、漂着物の調査、海岸の清掃活動等の市民が参加する行事やそれ以外の普及啓発策により、住民に海洋ごみ問題を啓発し、NPECが提案する「海洋ごみアクション」の考え方のような、日常の生活に根差した対策行動を促進していく必要がある。 | |
・ | 住民一人ひとりは、地域全体の環境の改善には自らの行動が必要なことを認識し、大きな連帯 の意識を持って取り組むことが望まれる。 |
このような海洋ごみ問題に関して、さらなる情報や意見の交換、議論を持つ場や機会として、事務局から、2011年度におけるNEARプロジェクト海辺の漂着物調査事業の実施について表明があった。「海辺の漂着物調査」や次回の「海辺の漂着物調査関係者会議」に多くの自治体が参加することが期待される。 | |
2011年2月18日 | |
「海辺の漂着物調査関係者会議」 参加者一同 |