公益財団法人 環日本海環境協力センター NPECは、日本海及び黄海における海洋環境保全に寄与することを目的に活動しています。

公益財団法人 環日本海環境協力センター[NPEC]

お問い合わせ

2016年度日仏海洋学会論文賞受賞について

 寺内主任研究員(調査研究部)が、2016年6月18日に日仏会館で開催された平成28年度日仏海洋学会総会において、2016年度日仏海洋学会論文賞を受賞しました。
1. 受賞研究のタイトル
  Influence of river discharge on seasonal and interannual variability of remotely sensed chlorophyll-a concentration in Toyama Bay, the Sea of Japan, 52(3), 49-60, 2014
(富山湾における衛星データがとらえたクロロフィルa濃度の季節および経年変動に対する河川流量の影響)
2. 論文執筆者(所属及び役職は2016年6月時点のもの)
  寺内元基(公益財団法人環日本海環境協力センター調査研究部 主任研究員)
辻本 良(富山県農林水産部水産漁港課 課長補佐・振興係長)
石坂丞二(名古屋大学宇宙地球環境研究所 教授)
中田英昭(長崎大学 副学長)
3. 受賞対象となった研究内容
  本研究では富山湾を対象として、人口衛星に搭載された海色リモートセンシングセンサから得られる海域(富山湾)のクロロフィルa濃度と富山湾に流入する富山県内の5つの1級河川の流量を比較し、富山湾の植物プランクトンの季節変動及び経年変化と河川流量との関係を明らかにしました。

 一般的に、温帯域の海域では、毎年冬になると海面で海水が冷却され、また海上を吹く風によって上層と下層の水が活発にかき混ぜられるため、厚い表層混合層が形成されます。春には、表面の海水が暖められることでこの混合が緩み、夏にかけて表面が暖かく、下層が冷たくなり異なる水温帯で水が成層構造を成します。そして、晩秋には、海表面の冷却が始まり、表層の混合が始まるという季節的なサイクルがあります。

 温帯域に属する日本海では、この混合が緩む春と混合が始まる秋に、下層から表層に運ばれた栄養塩類と日射を基に、光合成により植物プランクトンが増加する現象が見られます。

 この現象は、富山湾の沖合(下図サブエリアC)で見られる一方、沿岸部(サブエリアA)では河川を通じて栄養塩類が供給され、常に豊富な環境であることがわかりました。この河川を通じて供給される栄養塩類は、5月から10月にかけては富山湾の中央部(サブエリアB)まで達し、湾内の植物プランクトンの増殖に寄与することが明らかとなりました。

 富栄養化が進行するとクロロフィルa濃度は春以降も増加し、夏にかけて1山型のピークを示すようになります。

 本研究で得られた結果は、富山湾内だけでなく、河川の流入影響が大きい他の温帯域の海域においても同様の状況と考えられることから、海洋環境の理解に役立つとともに、モニタリング方法の高度化、効率化などにも活用されることが期待されています。


図1 衛星クロロフィルa濃度のピーク値のタイミングにより区分けされた富山湾
(a):年間最大値の出現日(ユリウス日)、(b):春型ピークが出現するエリア(青)、夏側ピークが出現するエリア(緑)、
(c):寺内ら(2014)により抽出された潜在的富栄養化海域、(d):(b)と(c)から3つのサブエリアに区分けされた富山湾。




2016年6月18日 2016年度日仏海洋学会総会および学術研究発表会にて
小松輝久日仏海洋学会会長(左)、寺内元基主任研究員(右)
日仏海洋学会ホームページ